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物流に関する基礎知識

物流におけるコンプライアンスの重要性

物流におけるコンプライアンスの重要性

物流事業者や企業の物流部門において、コンプライアンスは非常に重要なものとなっています。金融商品取引法と会社法により、「内部統制」の構築が義務付けられていることもその理由の一つです。今回は物流におけるコンプライアンスの重要性について解説しましょう。

物流におけるコンプライアンスの重要性

物流に関わる法令には実に多くのものがあります。まず会社法があり、さらに道路運送法、貨物自動車運送事業法、倉庫業法など物流関連の法律があります。道路交通法、道路運送車両法、労働基準法、労働安全衛生法、個人情報保護法なども重要です。これらは「必要最小限」守ればよいといった性質のものではありません。コンプライアンスという見地からいえばすべてを網羅して遵守する必要があります。それを実践するための包括的なシステムが、後述する「内部統制」だといえます。

そもそも物流は、人々の生活や企業の活動を支えるインフラとしての役割を担っています。物流が「安全」かつ「確実」に機能していることは社会にとって必要不可欠です。それゆえ、企業としてコンプライアンス、CSR(企業の社会的責任)に取り組む姿勢を社内外に示すことを怠れば、消費者や投資家からネガティブな評価を下されることになります。一般貨物の輸送量が増加し、物流のアウトソーシングも進んでいる現在、物流の現場で仮に違法行為があれば、そのダメージは多方面に波及してしまうでしょう。

コンプライアンスのために必要な内部統制とは?

現在、上場企業や関連企業は、金融商品取引法と会社法により、内部統制の構築と実施が義務付けられています。

内部統制とは、企業が自発的に、組織における業務の適正を確保するための体制を整備し、統制することです。この「業務の適正を確保するための体制」は会社法に出てくる表現です。業務の適正とは、違法行為や不正、ミスやエラーをなくし、組織が健全に、効率的に運営されるように所定の基準や手続きを業務に組み込み、組織内のすべての者によって遂行して、管理することです。噛み砕いていえば、企業は内規や業務ルールを作って、守り、違法行為などが行われないようリスクコントロールをしなければならないわけです。

とくに注意しなければならないのは、金融商品取引法によって、自社の内部統制について評価した報告書を事業年度ごとに提出しなければならないとされている点です。具体的には、上場企業や関連企業は、従来から決算時に公開していた決算報告書や財務諸表に加えて、新たに経営者が「内部統制報告書」を作成し、公認会計士などがそれを監査して、内閣総理大臣に提出することが義務付けられています。

この金融商品取引法による内部統制報告制度は、アメリカのSOX法を参考に、2008年4月1日以後に開始する事業年度から適用されており、日本版SOX法、J-SOX法などとも呼ばれています。

内部統制が機能していることを証明するためにすべきこと

上場企業などは、金融商品取引法による内部統制を報告するため、売り上げや経費などの数値を確定させる際にそのプロセスに不正や間違いがないことを証明する文書を用意する必要があります。そこで重要なのは、物流の現場でも内部統制が機能しているかどうかです。これらの企業から業務委託されている物流事業者は、荷主の要請に従い、内部統制評価の資料などを提出することが求められます。

内部統制が有効であることを証明するには、通常、業務記述書などの業務ルール集、業務フロー、リスクコントロールマトリックス(RCM)といった特殊な文書を用意する必要があります。これらは内部統制の評価作業に利用されるものです。内部統制評価の代行や体制づくりを指導するコンサルティング会社、内部統制監査を行う監査法人などでは、こうした文書を作成するために専用のソフトウェアを用いることが多いようです。しかし、アメリカでは6割の企業がこの文書化作業をMicrosoft Officeで行っています。業務記述書はWord、業務フロー図はOffice Visio、RCMはExcelで作ることが可能で、日本でもVisioの内部統制文書化ツールが無償で提供されています。

コンプライアンス、そして内部統制は、人的リスクをしりぞけるだけでなく、物流の業務を効率化することにも役立ちます。その重要性を正しく認識し、整備と構築を行ってください。