貿易/物流 お役立ちコラム
物流に関する基礎知識

物流におけるリスクマネジメントの重要性

物流におけるリスクマネジメントの重要性

いつ起きるかわからない自然災害から重要な情報の漏洩まで、物流事業者が潜在的に抱えるリスクには実に多くのものがあります。こうしたリスクについて経営者・担当者はどのように捉え、いかなる対策を講じればよいのでしょう。今回は物流におけるリスクマネジメントの重要性について解説します。

物流におけるリスクマネジメントの重要性

物流事業者にとって事業を成り立たせるための生命線は、「モノを安全に、確実に届けること」だといえます。物流の安全性と確実さが保証されていることは、個人ユーザーや日本の産業界全体にとってもきわめて重要なことです。しかし一方で、輸送(配送)、保管、情報処理など、物流活動の工程ではどの段階においてもさまざまなリスクが潜んでいます。物流におけるリスクマネジメントが難しく、重要だといわれるのは、安全性と確実さをおびやかすリスクが常にすぐ近くに、しかも数多くあるためです。物流という事業は、常にリスクマネジメントをしながら推進していくもの、ともいえるでしょう。

リスクマネジメントをすべき領域を把握しよう!

では具体的に、物流におけるリスクにはどのようなものがあるのかを見てみましょう。

まず挙げられるのは、災害・事故のリスクです。大規模なものから中規模、小規模のものまで、さまざまなレベルのものが考えられます。地震や台風、土砂災害交通機関の麻痺などに加え、盗難、破壊、テロなどもこれに類するものです。

次に、事業継承、経営存続、運営停止、業務遅延、規制強化などに伴うビジネスリスクが存在します。また、システムダウン、ネットワーク障害、外部からのハッキングや情報管理の不徹底からくる機密情報、顧客情報、個人情報の漏洩リスクも考えられます。

さらに従業員の過重労働、労働力不足、労働災害などのリスクもあるでしょう。そして、不正やヒューマンエラーなどの人的リスクに関わる内部統制、上記のいくつかとも重なる、業務契約、業界法令、事業法などに関わるコンプライアンスの問題も考えるべきでしょう。

リスクマネジメントでは、こうしたリスクを領域別に切り分け、整理しておかなければなりません。その上で適切な対策を考えることになるでしょう。

物流におけるリスクマネジメントのポイント

企業がこれらのリスクに立ち向かうにはどうすればよいのか、リスクマネジメントには、次の4つの考え方、対策があります。

1つ目はリスクの「移転」。これはリスクを保険などで担保するという考え方です。ただし、保険は災害や事故の際に保険金が支払われるという形でしか損失を取り戻せないので要注意です。他に「移転」の例としては、機材や施設のリース、業務のアウトソーシングも含まれます。

2つ目はリスクの「回避」。リスクを避けるための行動を選択するという考え方です。容認できないレベルのリスクがあれば、そのリスクにつながる事業を取りやめることも選択肢に入れます。新規事業に乗り出す際は、特に注意が必要です。

3つ目はリスクの「低減」という考え方です。アクシデントが起きたときのことを想定し、バックアップ体制を整えておきます。あるいは、システムがダウンしてもすぐに復旧できるノウハウを貯めておく、自然災害に対して施設の強度を上げる、防災訓練や安全衛生講習などを実施する、などがこの低減にあたります。

4つ目はリスクの「受容」という考え方です。「保有」と呼ばれることもあります。リスクはあるものとして受け入れ、実際に起きてから対処する方法です。予想できないリスクは否応なくこれに該当してしまうという側面があります。

リスクマネジメントは、上記4つの考え方から、いずれかを選択して行うことになります。リスクに対して万全の体制で備えるには、コストや手間がかかります。実際にアクシデントが起きたときにどの程度の損失を被るのか、リスクと経営戦略とのバランスをどうとるのか、これらを踏まえて対策を考えていくことになるでしょう。